大阪家庭裁判所 平成5年(家)4148号・平5年(家)4149号
主文
被相続人本上勝正及び同本上勢子の遺産を次の通り分割する。
1 別紙遺産目録1(1)ないし(3)の土地、建物を申立人の単独取得とする。
2 相手方本上彰は、同目録1(1)の土地について持分6分の2の、同目録1(2)の土地について持分21分の1の、同目録1(3)の建物について持分6分の2の遺産分割を原因とする各持分移転登記手続をせよ。
理由
一件記録により当裁判所が認める事実及び判断の要旨は、次の通りである。
1 相続の開始、相続分等
(1) 被相続人本上勝正は平成5年2月8日死亡し、ついで被相続人本上勢子が平成5年6月23日死亡し、それぞれ相続が開始した。その相続人は長男本上勇(申立人)、次男本上隆及び三男本上彰(相手方)で、被相続人両名に対する法定相続分はいずれも3分の1である。
(2) ところで、次男本上隆は、平成7年2月22日、その相続分を申立人に譲渡し、本件遺産分割事件の当事者たる地位を喪失したので、申立人の相続分が3分の2、相手方の相続分が3分の1となった。
2 遺産の範囲、評価
(1) 別紙遺産目録1(1)ないし(3)の土地、建物及び同目録2の預貯金が被相続人本上勝正の遺産であり、その遺産の持分2分の1及び同目録3の預貯金、現金が被相続人本上勢子の遺産である。ところで同目録2の預貯金は被相続人本上勝正の相続開始時の残高であるところ、その後申立人において解約し葬儀費用に使用したりクリーニング店の営業用の預金口座として使用し現在残高は0であるが、申立人においてこれを受領済であると認めている。また、同目録3の預貯金、現金はすでに当事者間の協議により相手方及び脱退前相手方(相続分譲渡人)本上隆が2分の1宛遺産の前渡しとして受領済である。したがって、本件手続で分割の対象となるのは同目録1(1)ないし(3)の土地、建物である。
(2) 相手方は、この他に○○共済会から申立人に支給された共済金80万円が被相続人本上勝正の遺産であると主張するが、これは、同会規約によると死亡会員の家族及び営業の安定を図ることを目的としているところ、その趣旨に基づき、同被相続人の同居家族でそのクリーニング業を引き継いだ申立人に対して支給されたものであるから、申立人の固有財産と見るべきであり、また、その趣旨から考えて申立人の特別受益と見るべきではない。
(3) 同目録1(1)ないし(3)の土地、建物の平成6年1月7日の不動産鑑定士による鑑定評価額は合計3994万8000円である。相手方は、本件遺産土地が都市計画上の住居地域に指定されていることを理由に、この評価額は低すぎると主張するが、不動産鑑定士によれば、本件遺産土地につき区画整理事業が完成するまでに今後10年程度見込まれるので、将来の発展の可能性があるとしても地下の上昇を招くまでにいたってないとされることに加え、現在は鑑定時から2年あまり経過しているがこの間の大阪市内の地下の下落傾向をも考えると、前記評価額が本件手続における遺産土地建物の評価として低いということはなく、申立人も前記評価額に従うことを認めている。なお、相手方は本件遺産土地建物を6000万円で買い取る話があるとも主張しているが、買主の特定をはじめなんら具体的な内容を持った主張ではなく資料もないから、認めることはできない。
同目録2の預貯金の合計は291万7221円であり、同目録3の預貯金、現金の合計は204万6024円である。したがって、被相続人本上勝正の遺産総額は4491万1245円である(3994万8000円+291万7221円+204万6024円)。
3 遺産分割の方法
(1) 本件遺産分割の方法として、遺産土地建物を申立人が単独取得し相手方に対し代償金を支払う方法により分割することは、すでに当事者間で合意している。また、同目録2の預貯金を申立人において受領済であること、同目録3の預貯金、現金を相手方及び脱退前相手方(相続分譲渡人)本上隆が2分の1宛遺産の前渡しとして受領済であることは前記のとおりである。
(2) 本件遺産総額は前記のとおり4491万1245円であるから、これに相手方の法定相続分3分の1を乗じた1497万0415円が相手方の具体的相続分である。
ところで、相手方は、<1>遺産の前渡しとして、平成5年6月27日、同目録3の預貯金、現金の2分の1である102万3012円を受領済である他、<2>代償金解決の合意に基づく代償金の前渡しとして、平成5年7月16日、申立人の固有財産の中から200万円を受領済である。
したがって、申立人が相手方に対して支払うべき代償金は1194万7403円である(1497万0415円-102万3012円-200万円)。
4 相殺
(1) 申立人は、相手方に対し、昭和63年8月6日から平成2年2月末日までの間、前後14回に渡り合計801万8520円の立替払をなし、同額の仮執行宣言付支払命令に基づく確定債権を有している(尼崎簡易裁判所平成6年(ロ)第××××号)。
(2) 申立人は、相手方のために、相手方の債権者兼根抵当権者である本件外株式会社△△との平成7年12月21日付合意に基づき、相手方が別紙遺産目録1(1)及び(3)の土地、建物の同人の持分に設定した根抵当権(大阪法務局北出張所平成6年2月17日受付第××××号極度額2000万円)を抹消するために、同会社に対し725万円を支払い平成8年1月31日同根抵当権を抹消した。したがって、申立人は、相手方に対し同額の費用償還請求権を有している。
(3) 申立人は、平成8年3月22日付上申書において、申立人が相手方に対し代償金の支払いを命じられたときは、上記(2)、(1)の各債権を自働債権としその順番で対当額において相殺する旨の予備的相殺の意思表示をした。なお、代償金債権は本来遺産分割審判により形成されるが、本件では当事者間の代償金分割の合意がなされた時点ですでに代償金債権が発生していると考える余地もあるから予備的相殺の意思表示も有効である。また、相手方は本件手続きで申立人が相殺の意思表示をなすことを全く認めないわけではないから、これを本件手続きで考慮することも可能と言うべきであり、それが本件紛争を一挙に解決する所以でもある。
したがって、相手方の申立人に対する代償金債権は相殺により消滅した。
5 持分移転登記手続
申立人に単独取得させる別紙遺産目録1(1)ないし(3)の土地、建物については、すでに相手方の相続分に応じた共同相続登記がなされているから、主文2項のとおり相手方に対し、その持分移転登記手続を命ずることとする。
よって、主文のとおり審判する。
別紙 遺産目録<省略>